研究会顧問 小林 孝之
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日本動物理学療法研究会顧問の挨拶
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日本動物理学療法研究会 顧問
小林孝之 |
成熟した社会では個人が尊重される反面、核家族化した人々はともすれば日常の会話も少なくなりがちで、社会への感心が薄くなる、孤独、認知症ひいては自殺などの問題が聞かれます。私は動物臨床の中で、飼い主が高齢を理由に動物の飼育を諦めた所から気力を低下させてしてしまう例と共に、動物を飼育することで、気力の充実した生活を送る多くの高齢者を見て参りました。またある飼い主は「先生、私この子のことが夫よりも大切なのです。何としてもよろしくお願いします。」と話され、当初その言葉に耳を疑いましたが、今ではは当たり前の事と考えるようになりました。動物がかけがえのない存在になると、飼い主は自分と同じかそれ以上の医療をその動物に受けさせたいと考えるようになります。そのため飼い主はその病気に感心を持ち、専門医を捜し最高の医療を受けさせようとするのです。
私は臨床活動として運動器疾患を専門としていますが、ある時自分が手術した犬が歩きにくくしていることに気付き、その足を見て触って筋肉が細くなり固くなっていることを知りました。同時に自分の外科がやりっ放しであったことを認識し愕然としました。しかしこの問題は自分の努力だけでは解決できない外科の管理と関係していると考え私の模索が始まりました。
アメリカの外科学会で動物のリハビリを知り、早速アメリカの動物リハビリテーション教育プログラムを受講し、次いで日本動物リハビリテーション研究会(現学会)設立に参加することになりました。しかしアメリカの動物リハビリ資格を得ても獣医師と動物看護師だけでは何もできず、方や獣医界では水中トレッドミルさえあればリハビリと思い込むような安易な状況が散見され、このままでは飼い主に信頼される日本の動物リハビリを構築する事はできないと危惧しておりました。
この度、日本理学療法界の重鎮であられる奈良勲先生の肝いりで、理学療法士の浅利和人先生・藤澤由紀子先生を中心とした日本動物理学療法研究会が設立されました。私はこの日が来ることを心待ちにしていた一人として、理学療法士が参加しない動物リハビリテーションは有り得無いと考えていました。設立総会では全国から会場にあふれんばかりの理学療法士の先生方が集まってくださいました。私はこれでようやく新しい歴史が始まると確信いたしました。
法的な問題も含め乗り越えて行かねばならない難問が山積しますが、日本動物リハビリテーション学会は貴日本動物理学療法研究会と手を携え、日本における動物リハビリテーションを構築して参りたいと存じます。本会益々の発展を祈念致しております。 |
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日本動物理学療法研究会 顧問
日本動物リハビリテーション学会 副会長
小林孝之
DVM, PhD, Dipl. JCVS, CCRT |
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